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最高裁判所第二小法廷 昭和50年(行ツ)69号 判決 1976年11月19日

広島市草津南三丁目一番六号

上告人

飯島忠夫

右訴訟代理人弁護士

阿左美信義

広島市加古町九番一号

被上告人

広島西税務署長佐伯常夫

右指定代理人

児玉一雄

右当事者間の広島高等裁判所昭和四六年(行コ)第一号所得税賦課決定取消請求事件について、同裁判所が昭和五〇年四月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人阿左美信義の上告理由第一点及び第二点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗本一夫 裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊 裁判官 本林譲)

(昭和五〇年(行ツ)第六九号 上告人 飯島忠夫)

上告代理人阿左美信義の上告理由

第一、上告理由第一点

採証法則違反

原判決には、証拠の採否に関する重大なる法則違反があり、ひいては判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるので破棄を免れない。

一、原判決は、本件課税処分の対象となつた昭和三四年乃至同三八年中における訴外広島工業(株)に対する貸金の貸主を「控訴人主張の福田一夫、吉田次良もしくは不二建設ではなく、控訴人自身であると認定するのが相当である」とし、その証拠として、

甲三一号証から第三五号証まで(訴外不二建設株式会社の昭和三〇乃至三四事業年度の各法人税確定申告書)

乙七号証の一から六まで(広島簡易裁判所昭和三九年(ノ)第二八号調停事件の記録)

乙第一〇号証の一から一四まで(訴外不二建設株式会社の昭和三九年五月一日乃至同四〇年四月一日事業年度分の確定申告書)

乙第一一号証の一から一〇まで(前記訴外会社の昭和三八年五月一日乃至同三九年四月三〇日事業年度の法人税額の確定申告書)

甲第一九号証(手形割引契約書)

甲第二九号証の一、二(会社経歴書)

乙第一乃至三号証(訴外広島工業(株)の借入金、支払利息関係書類)

乙第四、五、六、九、一三号証(訴外広島工業(株)の代表取締役俵積雄等、網谷敏各聴取書証明願、山本喜一の聴取書及び質問応答書)

乙第八号証の一から四まで(税務署員の調査書)

の外に一審証人網谷敏、同網本綱一、同森清、同三輪良亮、一審(第一、二回)および二審証人山本喜一などの証言を採用している。

二、しかしながら、原判決の挙示する証拠によつては、上告人主張の福田一夫ないし吉田次良なる人物が現存するか否か、右福田一夫ないし吉田次良なる人物と上告人との異同の点はさて借くとしても、少くとも本件課税対象となつた利息ないし損害金を生じた貸金の貸主が訴外不二建設(株)ではなく、上告人であるとの証拠としては、きわめて価値の低いものである。却つて原判決の挙示する証拠の内甲第三一号証から第三五号証(訴外不二建設株式会社の昭和三〇乃至三四事業年度の各法人税確定申告書)、甲第二九号証の一、二(会社経歴書)、甲第二七、二八号証(会社経歴書提出についてと題する書面など)、甲第一一号証から同一六号証(訴外不二建設株式会社の総勘定元帳中支払手形ならびに受取手形に関する項の写、広島銀行などの証明書)、甲第四〇号証の一から三、同四一号証の一から五、同四二号証から同四四号証の一、二まで(請求書その他)、甲第五一号証の一から一二(約束手形及び計算書)、甲第五二号証の一、二(領収書)、甲第四七号証の一から八まで(各約束手形)などの各記載からすれば、訴外広島工業株式会社と取引ないし融手関係のあつたのは訴外不二建設(株)であつて、上告人ではないこと、むしろ上告人が個人として訴外広島工業(株)と何らかの取引関係があつたとの点はこれを推認するに足る証拠がまつたく存しないことが充分窺えるのである。

さらに、本件課税処分の対象期間たる昭和三四年から同三八年までの間の取引についてみても、訴外広島工業(株)との取引の当事者は訴外不二建設(株)であつて、上告人個人でないことが、甲第一七号証の一、二(約束手形)、同一八号証の一乃至一〇(各約束手形)、甲第一九号証から二一号証(手形割引契約書の草稿、計算書)、同二二号証の一から三(不二建設株式会社の振替伝票)、同二三号証の一、二、同二四号証の一、二(普通預金通帳)、同二五号証の一から四(同会社の振替伝票)、同二六号証の一、二(不二建設株式会社の総勘定元帳)、同四九号証の一、二(手形貸付元帳の写)などの記載から充分に推認することができるのである。

の写)などの記載から充分に推認することができるのである。

しかして、原判決が上告人に対し、感情的に反感を抱いており、上告人を税務署に告発して、事実上、訴外広島工業(株)に対する追及の矛先をかわそうと意図している、訴外広島工業(株)の関係者である一、二審での証人山本喜一の証言や同会社の代表取締役の聴取書(乙四号証)や、同会社の裏帳簿である乙第一号証ないし同第三号証などの記載のみを信用し、上告人に有利な書証などの記載を措信せず、易く、本件問題の貸金の貸主が、訴外不二建設(株)でもなく、上告人個人であると認定したことは、採証法則に違反した、きわめて不当、不合理な判断であつて、この違法は、判決の結果に影響することはきわめて、明らかである。

よつて、原判決は、この点においてまず破棄を免れない。

第二、上告理由第二点

旧所得税法第一〇条一項の解釈適用の誤り

原判決は、旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)一〇条一項にいう「収入すべき金額」に該当する所得が、上告人にないのに、これあるものと認定解釈した誤りがあり、強いては、旧所得税法の前記条項の適用を誤り、この法令の違反は原判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れない。

一、原判決は原告の昭和三八年度分の雑所得金額は、八一六万八、五三七円である旨認定し、その証拠として、一審証人山本喜一の証言(第一、二回)及び乙第三号証を援用している。

二、ところで旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)一〇条一項にいう「収入すべき金額」の解釈としては、利息制限法による制限超過利息は、現実に収受された場合には、貸主の所得として課税の対象となるが、約定の履行期が到来してもなお未収である限り、収入実現の蓋然性がなく、したがつて、課税の対象となるべき所得を構成しないとするのが正当である(最高裁判所昭和四六年一一月九日、第三小法廷判決、民集二五巻八号、一、一二〇頁)。

三、ところで、甲第五四号証(和解調書)ならびに、乙第七号証の三)民事調停申立書)の記載によると、訴外広島工業(株)が上告人を相手方として、広島簡易裁判所に調停申立をした昭和三九年四月一日現在においても、未払利息金が八一五万円を超えていることが明らかである。

とくに右各証拠によれば、一見して利息の支払いのために振出された約束手形にして、かつ不渡りとなつた手形の存すること(例えば甲第五四号証の別表1乃至4、12乃至15、22、23、31乃至34、36、37、41、42、49乃至57、56乃至63番の各約束手形金)が明らかである。

しかるに、原判決が、右約束手形は、何時発生した如何なる元金の貸金についての利息の支払いの方法として振出された手形であるのかも確定せず、したがつて、右各約束手形記載の金額の利息が何時発生したのか、の点を明確にせずに、これらの金額が現実に収受された利息、損害金として計上されている疑いの充分に存する昭和三八年度分雑所得税を安易に前記のとおり八一六万八、五三七円である旨認定したのは、前記のような事実の確定を怠り、強いては、旧所得税法一〇条一項の解釈適用を誤つた疑いが充分に存する。

よつて、この点においても、原判決は法令の適用を誤り、かつ、この誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れないのである。 以上

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